古楽亭日乗

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2006年 03月 23日 ( 1 )

セーヌ川は天使の尻より出ず

 タイトルは、「セーヌ川の水には少々下痢を引き起こす作用がある」という、”十八世紀パリ生活誌 Le Tableau de Paris”(Mercier, 1782)からの言葉。お食事中の方、すいません。自慢ではないですが、私は胃腸が非常に弱い。そうすると主な活動地域のトイレ・マップを完全に把握しているということになります。またはどうすればトイレを見つけることができるか、というテクニックを自然と身に付けていくことになる。しかし、それは日本国内に限ってのこと。ヨーロッパではまったく私のトイレ発見テクニックが通じない。それこそ、セーヌ川の近くでピーコン!!!ピーコン!!!とおなかのカラータイマー(@ウルトラマン)状態になったときに近くのカフェに駆け込んだら、「うちは注文した客にしかトイレは貸さない」と冷酷な言葉、、、しかもあの辺りはカフェ一杯でも異様に高いのだ!あそこに公衆トイレがある、と教わると、数百メーターを全速力で走りぬけ、ようやく間に合った!というのは、まだ幸せなエピソードである。
 ハプニング続出のドイツツアー、一回目のコンサートのあった教会でのこと(ちなみにヴァイオリンを忘れたことが発覚したその日)。ここ数百年は変わることはなかっただろうと思われる質素な建物。リハーサルの後、私はトイレに行きたくなった。もちろんおなかの具合が少々よくなかったのだ。(前の晩に食べた、まずくて大きいピザのせいか、、、)牧師さんに、私は尋ねた。
「トイレはどこですか?」
牧師さんは笑顔で答える。「ありません。」
冗談と思った私はもう一度きく!「トイレはありませんか?」
牧師さん、満面の笑みを浮かべ、「ここにはありません。」
そして、聖なる教会の裏手の原っぱを指差し、
「誰も見てないから、あそこでしてくれば?」
「え”え”~~~~~~~~~~~!!!」(これは心の叫び)

神にすがらず、紙にすがった、というドイツ・トイレ事情の顛末でした。

お食事中の方、すいません。

 さて、マクラはその程度にして、先日のヴァイオリンの話の続き。

ヴァイオリンを忘れた事実に気づいた一行は、車の中で相談。選択肢はまず2つ。
その日と次の日は、コンサートがあるが、その後2日間はオフになる。
その間、

 1)渡邊孝がアムステルダムに電車で戻り、楽器を持ち帰る。
   アムス-ドイツ間の電車代は結構高い。もちろん自腹。
 2)3人で何事もなかったようにアムステルダムに車で戻り、楽器を持ち帰る。
   ガソリン代と唯一の運転手アンドレアスの疲労、推して知るべし。

どちらもコスト等考えるとあまりいい案ではありません。
そうすると、我らがアンドレアス、「ドイツで楽器を貸してくれる人を探すのは?」というアイディアを提案。彼が携帯電話で、友人等にかたっぱしから連絡、ツテをたどりたどって、ついにハレとカッセルの楽器屋さんに連絡がついたのです。距離的にはカッセルのほうが近いものの、ハレの楽器屋さんは、バロック・ヴァイオリンの在庫がかなりあり、人に貸し出すこともよくある、と想像だにしない理想的なご返答。「ハレに行くぞ!」と決まるまでにはそう時間がかかりませんでした。ちなみにハレは、ライプツィヒの北にあるヘンデル生誕の地。私達がいた中部ドイツからはかなりの距離(ドイツの地図をご覧ください)があったものの、オフの2日間、観光も兼ねて行く事になったのは、不幸中の幸いと言うべきか。
 その夜、綾子氏に連絡を入れると、さすがの彼女も驚いていました。周りの仕事仲間もかなりびっくりしていたようで、その事件はイタリアの仕事仲間の間でも有名になったようでした。(その後イタリアで、「あぁ!あなたがヴァイオリンを忘れた人?」と訊かれた。)
 いくらで楽器を借りることができるのか?という相場が全く分からないのでその点のみが不安でしたが、私達は、安心して2日間のコンサートを済ませ、ハレに向ったです。

 ハレの楽器屋さんに着くと、そこには10数台のバロック・ヴァイオリンが!それは日本では全く考えられないこと。さぁ、どれを借りるか!!、、、、、、、、、え、、、と、、、、誰が決めるの?というのは、奏者本人が来るのは、その次の日、弾く人がいないのにどうやってヴァイオリンを選ぶの!?

 リコーダー奏者 アンドレアス 「カケサンに任せる」
 チェンバロ奏者 渡邊孝 「まったく分からない」

とくれば、唯一の弦楽器奏者である私が弾かないわけがない。
f0058956_263652.jpg

最終的に私が選んだのは、18世紀末、Klotzファミリーのラベルがついている(偽装?)楽器。一週間の借用代24ユーロなり。(安い!)

次の日やってきた綾子氏は、その楽器を弾いて、とっても良い!と喜んでくれた、というのも不幸中の幸い。結果的には喜びのうちに騒動は幕を閉じたのでした!

そのときのコンサートツアーを報じたドイツの新聞。このヴァイオリンがそうです。
f0058956_3553630.jpg

参考のため、ハレの楽器屋さん
 Wolfram Ries www.ries-geigenbau.de

リースさん、リースしてくれてありがとう!(あ、ダジャレ多すぎ?)
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by takashikaketa | 2006-03-23 02:27 | Diario 記録 | Comments(6)

チェリスト 懸田貴嗣の備忘録


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