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古楽亭日乗

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文化庁芸術祭レコード部門優秀賞受賞

2012年9月にリリースされた
「ランゼッティ/チェロ・ソナタ集」(ALCD-1131, ALM RECORDS)が
平成24年度(第67回)文化庁芸術祭レコード部門優秀賞 をいただきました。


文化庁芸術祭レコード部門優秀賞受賞_f0058956_2255751.jpg


文化庁の発表ページ
http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/media_geijutsusai_121221.pdf

受賞理由:
サルヴァトーレ・ランゼッティはチェロのヴィルトゥオーゾとして国際的に名声を博した最初の人物とされるが、現在その作品は広く知られてはいない。本ディスクは、単に知られざる作品を発掘した(6曲中4曲が世界初録音という)だけにとどまらず、それらに秘められた極めて個性的な魅力を遺憾なく引き出した点が評価された。懸田貴嗣の卓抜した楽曲解釈と、渡邊孝の独創的な共演が相互に高め合って、エキサイティングな音楽作りが実現している。

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初めてのソロ録音がこのような賞をいただけるのは本当に嬉しい限りです。
共演の渡邊氏、録音を実現してくださったコジマ録音さん、その他沢山のお世話になった方々にはこの場を借りて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
作品に秘められた「極めて個性的な魅力」というのはまさにそのとおり、しかし「遺憾なく引き出」せたかどうかは自分ではいろいろと思うことがありますが、ともかくもランゼッティという音楽の魅力が少しでも多くの人に伝わることを願っています。録音からリリースにいたる過程での精神的なダメージ(笑)にここしばらく次に録音することは全く考えられませんでしたが、賞をいただいたことによって、私のようなものでも人が録音しないような良い音楽があれば、また録音してもいいのかな、と少しだけ勇気を与えられたような気分です。(皆様のご支援や支持があればそれも実現可能性があります!)

私の演奏の善し悪しはともかく!この録音が、ランゼッティのソナタをもっと聴きたい、弾いてみたい、もしくは他のバロック期のチェロ・ソナタにはどんなものがあるのだろう?ぜひ聴いてみたいというような、皆さんの音楽人生が少しでも豊かになるような一つのきっかけになることを切に願ってやみません。バロック音楽は、バッハやヴィヴァルディだけではありません、チェロのためのソナタはベートーヴェンとブラームスだけではないのです(もちろんそれらは本当に素晴らしい傑作達ですが!)。

あまりにマニアックな、、、と一蹴せず(←ここ大事なところ)、今後もコンサート、録音、様々な機会にぜひ触れていただけたらと思っています。私も少しでも皆さんに楽しんでいただけるよう、引き続き精進したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

まだCDをお持ちでないかたはぜひコチラを!
Amazonのランゼッティ注文ページ
# by takashikaketa | 2012-12-22 22:58 | Musica 音楽

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第5回

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 
第4回 ランゼッティ チェロ・ソナタ作品1の聴きどころ(5)

CDジャーナル ニュース
http://www.cdjournal.com/main/news/kaketa-takashi/46889

Yahoo ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120903-00000019-cdj-musi

Amazonでの注文ページは こちら

これまでの連載はこちら。
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第1回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第2回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第4回

CLASSICAサイトの飯尾さんがランゼッティについてブログ記事を書いてくださっています。
http://www.classicajapan.com/wn/2012/09/281145.html


さて、マイペースで書いてきた連載も5回目、そろそろネタも少なくなって来ました。
とりあえずは、最後の6番のソナタについて、書いてみましょう。

前半6曲の最後を飾るソナタ6番は変ロ長調。変ロ長調のチェロの曲と言えば、ボッケリーニのチェロコンチェルトが有名ですが、チェリストにとって決して弾きやすい調性ではありません。ヴィヴァルディの9つのソナタにはなぜか3つもの変ロ長調の作品が含まれており、それも一つの疑問点(Vero e falso 真作と偽作と題する論文集 Eleanor Selfride-Field"Vivaldi's celo sonatas")となっていますが、ランゼッティの場合は、ソナタ集全体の調性バランスの中で、変ロ長調のキャラクターを持つ作品を必要としたから、ということではないかと単純に推測します。
5番がシリアスな性格をもっていたのに対して、6番の1楽章は非常にユーモラスな作品です。テーマがforteとpianoで2回繰り返された後、突然トリルを含むおかしなアルペジオのゼクエンツがしつこく続いた後、いきなりのpiano、等々と少々ボケ倒しているかの如き展開。後半は平和にヘ長調、とおもいきやすぐにト短調へ、、、という気まぐれにもほどがあるだろう、ということばかり。ナポリ人、かく語りき?
2楽章は少々特別な楽章です。この楽章は2つの部分に分類され、レチタティーヴォ風の部分、そして通奏低音がずっと16分音符で半音階下降のラメントバスを刻む部分。ナポリの和音も印象的なレチタティーヴォ部分は、12曲のソナタの中でも特別な雰囲気、質を持っていると思います。最後のラメントの部分は録音でドツボにはまってしまった部分で、思い出すだけでも背筋が寒くなります笑。しかし、この2楽章はバロック時代のチェロ・ソナタLargo楽章の中でも名作ではないでしょうか。
3楽章は変奏曲。作品1の中で変奏曲を用いているのはこの曲だけ、6つの変奏から成っています。のんびりムードのテーマですが、Gavotta, Allegro ma non prestoという表記がついています。最後の忙しい変奏のことを考慮すると、最初のテーマはあまり早くできないのが悩みどころでしたが、ランゼッティはきっとこのヴァリエーションをスリリングに、そして見事に弾き切ったのではないかと想像します。活発な第4変奏の10度跳躍の連続、そのあとに来る穏やかな変奏への流れ、そしてラストの盛り上がりは前半6曲の最後に相応しい幕切れ、なのでしょうか。

ところで、ミシェル・コレットがチェロ・メソード(1741)の中で、ランゼッティは特にスラースタッカートの技術に優れていた、と記述していますが、作品1の中でそれに該当するような記譜部分は存在しません。しかし、特筆に値するほどのインパクトを与えたところを見ると、彼の運弓のテクニックも素晴らしいものだったことが分かると同時に、楽譜に書いてあること以上にヴィルトゥオーゾで即興的なアイディアを演奏に盛り込んでいたのだろう、と、当時の聴衆が羨ましく思えるのです。

 ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第5回_f0058956_23322576.jpg

これはランゼッティによる Principes ou l'application de violoncelle par tous les tonsの一部分。教則本的な作品ですが、彼の運指メソードが分かり、非常に興味深いものです。0は親指。
# by takashikaketa | 2012-09-30 22:28 | Musica 音楽

「ランゼッティ/チェロ・ソナタ集」ディスク批評

いくつかの音楽誌でCD評が掲載されました。徐々にブログでも紹介していきたいと思います。

音楽の友10月号
今月の注目盤 (諸石幸生氏)

サルヴァトーレ・ランゼッティ(1710?~1780)という18世紀イタリアのチェリストの手になる「チェロ・ソナタ集」(Ko-ALCD1131)が録音された。1736年に出版された作品1からの抜粋で、全部で6曲が演奏されているが、エチュード的な印象は皆無で、チェロの魅力がよく引き出された歌にあふれた作品の素晴らしさに心奪われる。演奏しているのは懸田貴嗣である。近年評価を高めている古楽チェロ奏者だが、しなやかに歌うカンタービレ、考え抜かれた様式感、そして香しい音色が織り成す世界は、まさに心の贅沢に浸らせる。

ぶらあぼ10月号
新譜ピックアップ
18世紀には”振興楽器”だったチェロの最初期のヴィルトゥオーゾ、ナポリ出身のサルヴァトーレ・ランゼッティ(1710頃~1780)が1736年に出版した、ソナタ集からの6曲。第1音から、その艶めかしさに驚かされる。だが、高度な技術のみならず、奏者にとっては、突然の楽想やダイナミクスの転換など、音楽解釈上の問題も山積。懸田はそれらに一つひとつ対峙し、チェンバロの渡邊と共に、丁寧に解いていく。その結果、謎多きヴィルトゥオーゾの実像に迫る、魅力的な録音に仕上がった。知られざる佳品に秀演で触れるにとどまらず、18世紀の音楽自体への先入観を覆す体験になるかも。(寺西肇)

Amazonでの注文ページは コチラ

予想以上に反響あり、嬉しい限りです。ぜひ多くの方に聴いていただきたいと思っています。
今週末のブログ更新に向けて、ネタを考え中・・・・

「ランゼッティ/チェロ・ソナタ集」ディスク批評_f0058956_01871.jpg

18世紀半ばトリノ宮廷劇場の様子(一部)。1752年前後とも言われていますが、だとするとランゼッティはロンドンからまだ帰ってきていないのか。しかし、彼はこの絵は見ているかもしれませんね。
# by takashikaketa | 2012-09-25 00:08 | Musica 音楽

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第4回

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 
第4回 ランゼッティ チェロ・ソナタ作品1の聴きどころ(4)

CDジャーナル ニュース
http://www.cdjournal.com/main/news/kaketa-takashi/46889

Yahoo ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120903-00000019-cdj-musi

Amazonでの注文ページは こちら

これまでの連載はこちら。
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第1回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第2回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回

各音楽雑誌のレビューも出揃いつつあり、少しほっとしています。
レビューとは別に、CDジャーナル10月号では、秋の夜長のバロック・チェロ、という題で簡単なチェロの発展史に加えて、お薦めのバロック・チェロCDを紹介する雑文を書いています。ぜひ御覧ください。66頁です。

さて、前回予告してしまったので、3番、1番、6番のソナタについて書かなければなりませんね。

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第4回_f0058956_28175.jpg

これは未出版のランゼッティ作品の筆写譜表紙。元々のつづりであるLancettiとなっています。

3番ニ長調の1楽章はAdagio cantabile。ゆったりとした旋律が流れる中、ロンバルディックなリズム(短長)がフォルテで突然出てきたり、流れを中断するフェルマータがあったり、、、と実は様々な変化の多い楽章。以前実演したときはかなり装飾を付けたのですが、録音では控え目に、できるだけ元々ある装飾的なラインを生かして弾いています。2楽章は4拍子のAllegro。度々出てくるフォルテの同音反復パッセージが少々可笑しいですが、途中でニ短調になる部分は、増2度や毎小節のアポジャトゥーラがなんとも言えない憂いをもっていて、好きなところ。チェロとチェンバロは一生懸命連打してます笑。 3楽章のMenuet Allegroは渡邊氏のアイディアでチェンバロの4フィートを使用。チェロはずっと中音域にいるのですが、かわいらしいメヌエットになっているでしょうか?3番はニ長調という調のせいもあってか、他のソナタに比べると素直な音楽で明快。はじめてランゼッティのソナタを弾くときはこの曲をお薦めします。

1番のト長調はAllegro-Adagio-Rondeau Allegro。録音の1曲めはこのソナタだったのですが、編集段階で意外に苦労したのもこの曲。親しみやすく軽い語りかけで始まり、半音階の下降が少々のアクセントとなったり、明快なゼクエンツとともに展開する1楽章。2楽章はあまりにシンプルなメロディー(例えば、冒頭のシードシドシ~)のため、どう演奏すべきか悩みましたが、少々の装飾なども加えてAdagioの雰囲気が出たのではと思います。でも、このテーマはちょっとシンプルすぎるよな・・・ 3楽章は弾く度に好きになっていったRondeau。実は作品1の最後を飾る12番の最終楽章もRondeauなのですが、私にはこの2つが作品1の両端で呼応しているように思えてなりません。人懐こいロンドー主題、昔を懐かしむような反復。

とここまで書いたところで、あまり長くならないようにとお達しもあったので、今日はここまでにします。
最後の6番についてはまた次回、もしくは次々回?
# by takashikaketa | 2012-09-22 02:11 | Musica 音楽

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回 ランゼッティ チェロ・ソナタ作品1の聴きどころ(3)番外編

CDジャーナル ニュース
http://www.cdjournal.com/main/news/kaketa-takashi/46889

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さて。本当は毎週金曜日のブログを更新することを自分に課しているわけですが、一日遅れてしまいました。ここ数日間はアルディッティSQ・アルディッティ氏ご子息のカウンターテナー、ジェイクとのコンサート、その後福岡の古楽祭などあり、バタバタとさきほど帰宅したところ・・・・

これまでの連載はこちら。
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第1回

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第2回

というわけで、頭も働かないし、これまでの連載は少々堅い話が続いたので、今回は難しい話は無しにしましょう、と勝手に決めてしまいました。

この「ランゼッティ/チェロ・ソナタ集」の演奏は、私とチェンバロの渡邊孝氏によるものですが、彼とはかれこれ10年以上の付き合いになります。皆さんもおそらくは御存知のアンサンブル「リクレアツィオン・ダルカディア」の、またはヨーロッパでのグループでの同僚としても長らく演奏活動を一緒にしているわけですが、偶然にも名前が同じ「タカシ」、ということで、様々なエピソードがありました。

たとえば、ドイツの教会でのコンサート後、つかつかと歩み寄ってきた年配の男性。
「ねぇねぇ、きみとチェンバロの彼は名前が一緒だけど、兄弟かなにか?」 (姓が一緒ではありません!)
というのは、まぁ笑えるほうで、

イタリアのある主催者はプログラムに、
「チェロ カケタ・ワタナベ、チェンバロ タカシ・ワタナベ」
と書いてしまった。(イタリアのコンサートの後にそのままポーランドでのコンサートがあったので、飛行機予約の名前も間違っていないか冷や汗ものだった。)
主催者曰く、「どっちかの部分が一緒だってことは覚えてたんだけどね~」とアバウトな様子・・・。

また、あるオーケストラのツアーでは、グループが昼と夜の2つの便に分かれて、ローマからウィーンへ移動することになっていた。私と渡邊氏は別々の便にグループ分けされていたので(プリントには、それぞれタカシ、としか書いていなかったが、私は早い便、渡邊氏は遅い便、と二人共信じて疑わなかったのだ。)早い便に乗るつもりで空港にグループで到着した私はチェックインする段階になって、ビックリ。リストにあるのはタカシはタカシでもワタナベの方。困ったことに後からくる渡邊氏は、意図せずして早い便を乗り過ごしたことになり、チケットがない。私は6時間くらい待てば済む話だが(とは言ってもこの待ち時間は長かった!)、彼はもし次の便の予約が取れないとなると一人取り残され、次の日のコンサートに間に合わない可能性もある。最終的にはなんとかチケットが買えて、無事ウィーンに辿り着いたのであったが、これは一つ間違えば、大きなロスになったエピソード。

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回_f0058956_0543253.jpg


とそんな幾多の困難?を乗り越えて、レコーディングしたのが今回のランゼッティなのでありました。

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これはレコーディング時の様子。

そして、なんと今回のディスクにはもう一つの大きな偶然が。
解説を書いて下さった、音楽学者山田氏もなんと高誌(タカシ)氏なのです。
もちろん名前で選んだわけではなく、彼はナポリ音楽に関して専門家でありますから是非に、とお願いした次第。
3人のタカシが作ったランゼッティ、と、そんなことを知ったところで楽しみが増えるわけではありませんが(笑)、そんなエピソードも交えつつ。

次回こそは、後半3曲、3番、1番、6番のことを書こうと思います。
# by takashikaketa | 2012-09-16 00:56 | Musica 音楽

チェリスト 懸田貴嗣の備忘録


by takashikaketa
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