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古楽亭日乗

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ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第5回

ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 
第4回 ランゼッティ チェロ・ソナタ作品1の聴きどころ(5)

CDジャーナル ニュース
http://www.cdjournal.com/main/news/kaketa-takashi/46889

Yahoo ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120903-00000019-cdj-musi

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これまでの連載はこちら。
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第1回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第2回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第3回
ランゼッティ チェロ・ソナタ集CD発売記念連載 第4回

CLASSICAサイトの飯尾さんがランゼッティについてブログ記事を書いてくださっています。
http://www.classicajapan.com/wn/2012/09/281145.html


さて、マイペースで書いてきた連載も5回目、そろそろネタも少なくなって来ました。
とりあえずは、最後の6番のソナタについて、書いてみましょう。

前半6曲の最後を飾るソナタ6番は変ロ長調。変ロ長調のチェロの曲と言えば、ボッケリーニのチェロコンチェルトが有名ですが、チェリストにとって決して弾きやすい調性ではありません。ヴィヴァルディの9つのソナタにはなぜか3つもの変ロ長調の作品が含まれており、それも一つの疑問点(Vero e falso 真作と偽作と題する論文集 Eleanor Selfride-Field"Vivaldi's celo sonatas")となっていますが、ランゼッティの場合は、ソナタ集全体の調性バランスの中で、変ロ長調のキャラクターを持つ作品を必要としたから、ということではないかと単純に推測します。
5番がシリアスな性格をもっていたのに対して、6番の1楽章は非常にユーモラスな作品です。テーマがforteとpianoで2回繰り返された後、突然トリルを含むおかしなアルペジオのゼクエンツがしつこく続いた後、いきなりのpiano、等々と少々ボケ倒しているかの如き展開。後半は平和にヘ長調、とおもいきやすぐにト短調へ、、、という気まぐれにもほどがあるだろう、ということばかり。ナポリ人、かく語りき?
2楽章は少々特別な楽章です。この楽章は2つの部分に分類され、レチタティーヴォ風の部分、そして通奏低音がずっと16分音符で半音階下降のラメントバスを刻む部分。ナポリの和音も印象的なレチタティーヴォ部分は、12曲のソナタの中でも特別な雰囲気、質を持っていると思います。最後のラメントの部分は録音でドツボにはまってしまった部分で、思い出すだけでも背筋が寒くなります笑。しかし、この2楽章はバロック時代のチェロ・ソナタLargo楽章の中でも名作ではないでしょうか。
3楽章は変奏曲。作品1の中で変奏曲を用いているのはこの曲だけ、6つの変奏から成っています。のんびりムードのテーマですが、Gavotta, Allegro ma non prestoという表記がついています。最後の忙しい変奏のことを考慮すると、最初のテーマはあまり早くできないのが悩みどころでしたが、ランゼッティはきっとこのヴァリエーションをスリリングに、そして見事に弾き切ったのではないかと想像します。活発な第4変奏の10度跳躍の連続、そのあとに来る穏やかな変奏への流れ、そしてラストの盛り上がりは前半6曲の最後に相応しい幕切れ、なのでしょうか。

ところで、ミシェル・コレットがチェロ・メソード(1741)の中で、ランゼッティは特にスラースタッカートの技術に優れていた、と記述していますが、作品1の中でそれに該当するような記譜部分は存在しません。しかし、特筆に値するほどのインパクトを与えたところを見ると、彼の運弓のテクニックも素晴らしいものだったことが分かると同時に、楽譜に書いてあること以上にヴィルトゥオーゾで即興的なアイディアを演奏に盛り込んでいたのだろう、と、当時の聴衆が羨ましく思えるのです。

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これはランゼッティによる Principes ou l'application de violoncelle par tous les tonsの一部分。教則本的な作品ですが、彼の運指メソードが分かり、非常に興味深いものです。0は親指。
by takashikaketa | 2012-09-30 22:28 | Musica 音楽

チェリスト 懸田貴嗣の備忘録


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